特集記事
【法隆寺】 世界で一番古い木造建築
日本で最も有名なお寺といえば、奈良の法隆寺ではないでしょうか。
飛鳥時代の姿を現在に伝える世界最古の木造建築であり、日本で最初に「世界遺産」として登録を受けた場所でもあります。約18万7千平方メートルの広大な境内には、飛鳥時代をはじめ各時代を代表する建築物が軒を連ねています。国宝・重要文化財指定が約190件、点数にすると2300余点に及び、その壮大な背景については語り尽くす事はできません。
◆創建の由来◆
創建の由来は「金堂」の東の間に安置されている「薬師如来像」の光背銘や『法隆寺伽藍縁起并流記資財帳』(747)の縁起文に残されています。法隆寺が建立されたのは推古天皇の15年(607)と伝えられています。聖徳太子の父である用命天皇が、自らの病の回復を祈って建立しようとしたものの、志半ばで崩御した為、息子の聖徳太子がその意思を継いで完成させたものとされています。1400年にも及ぶ輝かしい伝統を今に誇り、1993年12月ユネスコの世界文化遺産のリストに日本で初めて登録されるなど、「仏教文化の宝庫」「誰もが一度は訪れてみたい場所」と世界中から熱い注目を浴び続けています。
右絵:大和名所圖會 寛政3年(1791)刊より
◆七つの謎◆
法隆寺にはいまだに数多くの謎が存在します。
今回はその中でも有名な「七不思議」とされる言い伝えに注目してみましょう。
まずは最初の3つ。
■①:蜘蛛が巣を作らず、雀も糞をかけない。
■②:片方の目しか見えない蛙がいる。
■③:雨が降っても地面に雨だれの穴ができない。
上記3つは法隆寺へ行けばすぐに聖徳太子信仰が生んだ伝説だと判断できてしまいます。
①は、聖徳太子のような高貴な人が建てた寺では、蜘蛛は畏れ多くて巣がはれず、雀は糞をできないだろうという逸話です。
当然ですが、実際に蜘蛛の巣ははりますし、雀も一般の建物と分け隔てなく糞をしてしまっています。
②は、聖徳太子が勉強中、蛙の鳴き声がうるさい為、「静かにせんか」と筆の先で蛙の片目をついたところ、池にいた蛙の全ての片目が見えなくなったという言い伝えから来ています。
当然ですが、そのような独眼の蛙が現在に至るまで実際にいるわけではありません。
③は、法隆寺の水はけの良さ、しっかりした地面に建てられていることを誇示する為に作られた話だとされています。
実際には、雨だれの穴はいくつも見受けられます。
さて、次のお話から少しずつ俗説と真実の境界線があいまいになっていきます。
■④:五重塔の相輪に四本の鎌が刺さっている
実寸長さ2m(相輪の高さは10m)にもおよぶ大鎌です。
聖徳太子が怨霊封じの為に作ったという説もありますが、これは一種の避雷針の役割を持っていたとされています。
鎌倉時代、塔の三重の部分に落雷した事があり、その魔除けとして鎌を打ちつけたと伝えられています。
中国古来の五行(世の全ての事象は木火土金水の五属性にあるという考え)が関係しているとされ、雷は「木」、鎌は「金」とされ、「金」は「木」に勝ることから鎌がかかっているとも考えられるそうです。
また、この鎌が上向きに見えたらその年は米が豊作で、下向きに見えれば凶作であるという占いの意味も伝えられています。
ここから2つは信仰が解明を拒んでいる謎とされています。
■⑤:夢殿の礼盤(お坊さんが座る台)の裏側がじわりと汗をかいている
法隆寺では、毎年2月に礼盤を日光に当て、陽の光により帯びる水気の量によって豊作か凶作かの占い(夢殿のお水取り)を行います。
この礼盤を日光に当てる際、汗のように水が吹き出る原因は、礼盤の下に井戸があるのではないかなど、諸説があります。
掘って調べれば詳しく解析できるかもしれませんが、信仰上許されるわけがない為、その仕組みは未だ正確に解明されていません。
■⑥:中庭に伏蔵が3つある
伏蔵とは地中に埋められた宝蔵の事です。経典中にもこの「伏蔵」という名称は使われており、インド伝来の用語です。
金堂の北東の角、経蔵の中、回廊の南西の角と計3つあり、石の蓋で覆われています。
聖徳太子が遺言で「法隆寺に危機が訪れたとき以外は、開けてはならぬ」と災害時の再建の為、財宝を収めたと伝えられています。
未だに誰も空けたものはおらず、中を見たものはいないとされていますが・・・
最後の一つは、もはや解明できないとされている謎です。
■⑦:南大門の前にある魚の形をした「鯛石」の意味
南大門の石段下に、長さ2m、幅1mの魚の形をした踏み石があり、大和川が氾濫して、大和の国が洪水に見舞われても、この鯛石までしか浸水せず、魚がそこから内部に入らなかったという場所を示しているそうです。
この位置は、大和川堤防とほぼ同じ高さとされており、水害が及ばなかったのは、単なる偶然か。計算された法隆寺の設計によるものか。はたまた霊的な力なのか、謎として現在に至ります。
■建築学的な謎
建てられてから一度も倒れていないと伝えられている五重塔の堅牢さは現代の建築家の間でも「神秘」とされています。
1000年を超える時の中で、台風や地震、様々な災害がどれだけ襲ってきたでしょうか。
この頑丈さを科学的に解析してみると、まず、材質面の理由として、柱や梁に檜が使われている事があげられるそうです。
檜は木目が緻密な上、油分を含んでいる為、腐りにくい特性を持つからです。
次に、鉄釘を使っていないことも上げられます。一見丈夫に見える鉄は錆びやすい為、木を腐敗させる原因となるのです。
設計、構造上の頑丈な理由として、地下深くに基礎工事を行い、礎石を埋め、そこに心柱を立てている事もあげられます。
さらに、塔の一番上に、九輪という重量7トンの金具を乗せている事があります。
こんなにも重いものが高い塔の上に乗っているというだけで、普通に考えれば不安定で倒れやすく見えます。
しかし、実際は重心を上部に置くと、台風や地震の際、地面と頂上の間の部分が揺れ、真ん中の心柱が色々な振動の抵抗を吸収してくれるというから驚きです。
その結果、揺れはするものの、非常に折れにくい仕組みが実現されているのです。
これは、現代の高層ビルの柔構造と似た原理と言えます。
「耐震基準」という用語すらない時代に、どのようにして高度な建築技術が生まれ、駆使されていたのか、大きな謎です。
この時代の熟練の宮大工(仏寺建築専門の大工)さん達が、心柱の檜に心を込め、命を賭けて五重塔を建立したことは言うまでもありません。
- 【名称】
- 法隆寺 (ほうりゅうじ)
- 【所在地】
- 〒636-0115 奈良県斑鳩町法隆寺山内1-1
- 【問い合わせ先】
- 0745-75-2555
- 【交通アクセス】
- JR大和路線「法隆寺駅」から「法隆寺門前行」のバス約8分「法隆寺門前」下車すぐ
または近鉄「筒井駅」から「王寺駅行」の「法隆寺前」下車、徒歩5分 - 【開門時間】
- 8:00~17:00(11/4~2/21は8:00~16:30)
- 【料金】
- 大人1000円、小学生500円
- 【公式ホームページ】
- http://www.horyuji.or.jp/
- 【法隆寺ツアー】(Travel.co.jp)
- http://mokuteki.travel.jp/1/1/6/

